3Dプリンターの住宅は普及していくか
こんにちは!前田専務です!
本日の北國新聞にて、珠洲市で3Dプリンター住宅が建てられた記事が掲載されていましたね。
住宅を3Dプリンターで完成まで48時間、珠洲で着工、普及目指す -北國新聞デジタル-
3Dプリンターとはコンピュータで作った3Dのモデリングデータを専用の機械に読み込ませて現実にその立体を削り出す技術のことですが、この技術で住宅を作ってしまおうというのが3Dプリンター住宅です。
建設用3Dプリンターという大型の機械でモルタル製の部品を作り、それを現場で組み合わせて建築します。
費用は本体価格で550万円という住宅としては破格の値段にも驚きですが、もっとすごいのは施工期間です。
その納期は1日8時間の作業で6日間。なんと一週間足らずで住宅1軒が完成してしまうというから驚きです!
また近頃のモデルでは壁を構成する部品が2重構造になっていて断熱性や耐震性にも優れているというので技術の進歩の速さに関心させられます。
この3Dプリンタ住宅は10年ほど前から話題になり始めました。大変興味深い技術なので私も気になっていたのですが、石川県内でも事例が見られて嬉しく思います。
今回はホテル施設の敷地内に建てられ、能登半島地震の被災者に無料で体験してもらえるイベント等に用いられるそうですが、この試みがきっかけとなって今後、災害が起きたときに安価で大量の仮設住宅を作ることに転用できたら素晴らしいなと思います。
そんな3Dプリンター住宅ですが、もちろん言うことなしのパーフェクトな新技術というわけではなくデメリットもあります。
「3Dプリンター住宅 デメリット」で検索しただけでもいくつかの問題点を取り上げた記事が見つかりましたが、不動産業者の観点から見て特に大きな問題だと思うのは、
①建築基準法に準拠させるのが難しい
②対応する住宅ローンがない(少ない)
③改修や設備のメンテナンスに費用が掛かる
このあたりでした。
①の建築基準法に準拠させるのが難しい理由についてですが、現行の建築基準法では壁や柱といった「構造耐力上主要な部分」(建物に作用する荷重を負担する部分)にモルタルを使うことを想定していないためです。世界では多数の建築例がある3Dプリンター住宅が日本ではほとんど実例がないのもこのためです。
構造体力上の主要部分にこれらの材質を用いる場合は、JIS基準に合致したものを用いるか製造体制などに関する審査を受け、「国土交通大臣認定」というものを取得する必要がありますが、費用も労力も要するので一般消費者が自己使用のためにいちいち取得するのはあまり現実的ではありません。
とはいえ、部材の空洞に鉄骨を入れてコンクリートを流し込むことで「鉄骨コンクリート造」という扱いにして建築基準法をクリアする試みもあるとのことなので、解決されるのは時間の問題なのかもしれません。
②対応する住宅ローンがない(少ない)は①と同じく一般消費者の住宅購入としては致命的な課題だと言えます。ほとんどの住宅ローンでは購入する不動産に抵当権(担保)を入れますが、3Dプリンター住宅は対応年数が長いとは言え実際に20~30年を経過した建物の事例がないので担保価値が図れないというのがその理由です。
まったく対応するローンがないという訳ではないですが、無担保ローンなので上限額が1,000万円程度であったり返済期間が短かったりと、通常の住宅ローンに比べると不利と言わざるを得ません。
③改修や設備のメンテナンスに費用が掛かる、について。これは水道や電気など生活に必須のライフラインについて3Dプリンター住宅に対応できる業者さんがほとんどいないことが原因です。建物の完成後、新たに配電をしたり水回りの位置を変えたりする際に、普通の住宅ならば少し壁をはがしてちょちょい・・となるはずが3Dプリンタ住宅はセメント系の部材で全面がおおわれているので後から改修するには専門業者が必要になることが予想されるようです。
また同様に経年劣化などの補修にも都度、専門業者が必要になる可能性があり、そのあたりの費用面のリスクは確かに存在すると思われます。
しかし、少しずつ実例を積んでいけば、いずれはどの課題も解決されていくように思いますので、こうした革新技術に携わる企業にはぜひぜひ頑張っていただきたいですね。